セミリンガルという言葉を聞いたことがありますか?

今日は少し長くなりそうです。
二言語環境にいながら、第1言語(母語)も第2言語も年齢レベルに達していない状態を指します。セミ(semi-)が否定的であるという意見から、ダブルリミテッドバイリンガルという場合もあります。セミリンガルは学問的に定義できるわけではないけれども、高度な学習の読み書きや認知面に問題を抱えるバイリンガルの言語状態は存在するといえます。

 

例えば、家では母と日本語、父とドイツ語を、幼稚園では先生と英語で、子どもと話しているうちに、その3人の誰もが理解できない言語・文節を子どもが話すようになってしまった。(担当は決めていたものの、その線引きはあいまいなものであったと思われる)

また、英語の幼稚園に通う子どもが「車は、日本語でなんていうの?」と、言語同士が子どもの頭の中で混在し、知っている言葉が何語かわからなくなっているケースもあります。

そして、どの言語も幼稚な言葉にとどまり、年齢相当の言語獲得に至っていない状況になります。

これは、本当に恐ろしい状態です。

人間は、言葉によってしか思考ができません。深い思考にふさわしい言葉を知っていなければ、論理性を高めたり哲学的なことを考えることができないのです。すると、考えることが行き当たりばったりで、計画性がなくなり短絡的な犯罪者に多い「自己中心的な人間」になりやすいとも言えます。

私は、第二言語を始めるのは、脳の言語野が発達してくる8歳~10歳ごろのスタートでいいと思っています。いや、もっと遅く中学生からスタートでも全くそん色なく大学レベルのものが英語で考えられるようになります。

例えばこんな風に例えると、理解していただきやすいでしょうか。

赤ちゃんが、言語を入れる箱を脳の中に持って生まれてきます。その箱はまだ小さいのですが、入れれば入れるほど箱は引き出しを増設できるとします。

はじめに一つの言語をしっかりと学んだ場合、その箱の中には第一言語がきちんと整理されてはいっていきます。

子どもの脳がまだ準備できていない状態から2~3種の言語を入れていくと、その同じ一つの箱にまぜこぜになって入ってしまいます。これが問題ありなのです。

8~10歳くらいまで待てば、脳の言語野が広がり、箱をもう一つ持つ余裕が出てきます。そのころから第二言語を学び始めると、二つの言葉を上手にそれぞれの箱に整理しながら入れられるのです。

幼いころから英語教育を取り入れてしまい、日本にいながら、日本語で話すべき時に英語などが出てきてしまうお子さんはいらっしゃらないでしょうか。特に英語が母国語ではない人が運営している園や教室などに通っているお子さんがとても心配です。

そのお子さんはまわりのお子さんに比べて、言語習得が遅れていたり、発想が幼かったり、集中力なくガサガサしていたり、すぐにあきらめたり、かんしゃくをおこしたりしていないでしょうか。もし、心配な状況なら一度お子さんの言語環境を考え直してもいいかもしれません。

さて、では国際結婚などで日常的に二つの言語を耳にしてしまうお子さんの場合は,

どうすればいいでしょうか。

このような状況下でありながら、子どもに混乱させることなく3つの言語を獲得させたご夫婦がいらっしゃいます。

♦ノルウェー人と日本人の家庭における言語教育(ベルギー在住)

『とにかく言葉をMIXさせないようにする。(子どもに対して)自分は絶対日本語で話し、夫は絶対ノルウェー語だけを話す。たとえ自分と夫は英語で話しても、子どもに話す時は英語にしない。現在、ノルウェー語、日本語、そしてオランダ語の3言語を話すようになった。』(言語の担当者を厳格に決めていた)

つまり、まだ箱を一つしか持たない年代でも、せめて引き出しを分けて考えられうように、明確にその言語を使う人間を決めたというのです。

幼い子どもは、話す相手の顔・声・匂いそういうものから、この人とはこの言語と選択していると思います。おそらく最初はそうですよね。ところが日本人のような顔をしているのに「この人とは英語で、この人とは日本語?わかんなーい、じゃ一緒でいいや」と、一つの箱にごちゃ混ぜに入れてしまい、使うときにうまく選び出せなくなってしまうと思われます。(8歳ぐらいになれば、判断の仕方はかわってきますが。)

外国人慣れしていない大人でもいますよね。欧米人の顔をした人が道に迷っていたら、つたない英語で教えてあげようとする人。その外国人は英語を話さないかもしれないし、日本語を話せるかもしれないのに。(ちょっと余談でした)

 

しかし、子どもが幼いうちの言語教育は、本来その子の軸となる一つの言語を、しっかりと学ばせることが大切です。

なぜでしょうか。

例えば、英語の環境下で12歳ごろまで過ごし、第一言語が英語となった場合を考えてみましょう。

その後、日本に帰ってきて日本語を使うことが増えると、第一言語の英語は12歳あたりで止まってしまいます。つまり、体は大人になってもその人のものの考え方は第一言語の12歳くらいで止まってしまいます。『幼い大人』の出来上がりです。

その後、第二言語をいくら流暢に話せるようになっても、思考は第一言語の12歳並みです。

人間は、赤ちゃんの時は自己中心的なものの考え方しかできませんが、成長するうちに他の人のこと、つまり社会を考えることができるようになり、そこから論理や哲学を考えるようになります。その思考には必ず言語が必要です。人間は言語で物を考える生き物だからです。

12歳の年齢相当の第一言語しか獲得できていない場合、その少ないボキャブラリーと12歳相当の思考で物事をとらえ考えることしかできません。結果として出てくる判断は幼いものとなります。

私はこのことを考えるとき、インターナショナルスクールを卒業して英語と日本語を自在に使いながら仕事をしていた、昔の仕事仲間を思い出します。彼はやはりものの考え方が表面的で、自分でもそれに気付いていて苦悩していました。今思えば上に書いたような仕組みで、物事を深く考えられなかったんだなと思います。「英語で考えるほうが楽」と言っていましたが、深く考えられないのですぐにするりと別のことをしてしまうのだそうです。根気がないというか…。当時は企画のようなことをしていましたが、今は何をしているでしょうか。

ですので、「第一言語はこれ」と決めたら、途中で変えないことが大切なのです。

その第一言語は何語がいいのでしょうか?

答えは、「何語でもいい」です。

ただし、親からのプレゼントとして第一言語を選ぶとすれば、歴史の浅い言語はやめたほうがいいですね。

 

先ほどの箱を例えに書いていきます。

第一言語と第二言語を獲得した子どもは二つの箱を脳の中に持っています。

その二つの箱を相互に行き来しながら物を考えるとき、(例えば日本語が第一言語の人が英語の文章を読むときなど、ダイレクトに英語で理解していてもこの間の行き来はあります)日本語のような歴史が長い言語の場合は、第二言語に対応する言葉があるのです。しかし、歴史の浅い言語の場合、対応させて考えようとしてもそれに対応する言葉がないと、その言葉の持つ本質を理解できないのです。

世界で最も古い言語で、現在も使われている言葉は中国語だそうです。古くからある言語で今もたくさんの人が使うものは、それだけ大勢の人がその言語の言葉を生み出し表現してきたということです。ですから、中国語や日本語を第一言語にした場合、第二言語に対応する言葉が見つけやすいですし、もしきっちりと対応する言葉がなくても第二言語を理解を補う言葉が存在するのです。

 

是非、この年末年始にお子さんの言語環境を考えていただき、知能の発達を第一にして選択していってくださいね。本格的な第二言語の獲得は、8歳以降のほうがより良いと思います。

※ただし、日本語にない音だけは赤ちゃんの時から聞かせておいてあげないと、それを聞く能力を「不要な能力」として年齢がくると自然とそぎ落としてしまうので、音だけは聞かせておいてあげてくださいね。(例えば、外部からステロイドを摂り続けた場合、副腎皮質が「体の中にたくさんあるからもう作らなくていいや」と、体内でステロイドを作らなくなるのと同じような作用です)