5、感情の波の大きさ

――大脳辺縁系と気質の遺伝

気分の浮き沈みが激しい人、
逆にいつも穏やかな人。

この「感情の波」の大きさは、
どこから来るのでしょうか。

感情の中枢となるのが
脳の「大脳辺縁系」という部分です。

扁桃体(恐怖・怒りの処理)
海馬(記憶と感情の関連付け)
視床下部(ストレス反応の調整)
などが含まれます。

この大脳辺縁系の発達パターンには、
父親の遺伝子が大きく作用する
ことが研究で示されています。

特にマウスの実験では、
父親由来の遺伝子が大脳辺縁系の発達を促進し、
母親由来の遺伝子が抑制的に働くという
「ゲノムインプリンティング」の仕組みが確認されています。

(Keverne et al., 1996, PNAS)

また、気分の安定性や攻撃性に関わる
セロトニントランスポーター遺伝子(5-HTTLPR)は、
その変異型の有無によって
感情の波の大きさに影響します。

この遺伝子は父・母どちらからも受け取りますが、
父親から受け取るバリアント(変異の組み合わせ)が
感情の反応性に大きく影響することが示されています。

「お父さんみたいに怒りっぽい」
「お父さんみたいに感情が豊か」

そういった気質には、
遺伝的な背景があるのかもしれません。


まとめ

父親から子どもへと受け継がれるもの

1、性別   → Y染色体が決定。100%父親由来。
2、方向感覚 → 遺伝率約80%。X染色体上の遺伝子が関与。
3、集中力  → ドーパミン受容体遺伝子。ほぼ100%遺伝で父の遺伝子が優位。
4、薄毛リスク→ アンドロゲン受容体+常染色体遺伝子。父方・母方両方が影響。
5、感情の波 → 大脳辺縁系の発達に父の遺伝子が強く関与。

「遺伝だから仕方ない」というわけではありません。

遺伝はあくまでも「素地(もとになる土台)」です。

その土台の上に、どんな環境を与え、
どんな経験を積ませるかによって、
子どもの力は大きく開花していきます。

父親の存在は、遺伝的なつながりだけでなく、
日々の関わりの中で子どもを育てる力
にもなっています。

次回は、父親と子どもの「関わり方」が
脳の発達に与える影響についてお伝えします。