実はこの「小学生でもわかる疑問」が、
物理学最大の謎のひとつだったんです。
「情報は消えない」って、どういうこと?
たとえば、手紙を燃やしたとします。
灰になった手紙は読めません。
でも物理学的には、灰の分子をひとつひとつ調べれば、もとの手紙に何が書いてあったかわかるはずです。
これを「情報は消えない」と言います。量子力学の基本ルールのひとつです。
ブラックホールって何?
ものすごく重くて、光さえも吸い込んでしまう宇宙の天体です。
一度入ったら何も出てこられない——ずっとそう思われていました。
ホーキング博士の「まさか」の発見
1974年、スティーヴン・ホーキング博士が驚くことを言いました。
これが「ホーキング放射」と呼ばれる発見です。
で、何が問題なの?
ホーキング放射は「ただの熱」です。
どんな物質が吸い込まれたかに関わらず、同じような熱が出てきます。
「情報は消えない」という量子力学のルールと、真っ向からぶつかります。
これが「ブラックホール情報パラドックス」です。
ホーキング博士の「賭け」と、まさかの敗北
1997年、ホーキング博士とキップ・ソーン博士は、
カリフォルニア工科大学のジョン・プレスキル博士と賭けをしました。
「情報は消える!
ブラックホールが蒸発したら、情報は永遠に失われる」
「情報は消えない!
量子力学のルールは絶対に破れない」
そして2004年、ホーキング博士は敗北を認めました。
賞品として、プレスキル博士に野球の百科事典⚾を贈りました。
(ホーキング博士は「情報は灰から取り出せるように、ブラックホールからも取り出せる。ただし使い物にならないかもしれないが」とコメントしています)
じゃあ、情報はどこに隠れてるの?
世界中の物理学者が今も研究中です。現在有力な考え方は——
💡 ホーキング放射に「こっそり情報が混じっている」
一見ランダムに見える熱放射でも、量子的なもつれによって情報が微妙にエンコードされているのかもしれない、という考え方です。
📌 まとめ
- 量子力学は「情報は消えない」と言っている
- ホーキング博士はブラックホールが熱を出して蒸発すると発見した
- その熱には情報がないように見え、矛盾が生まれた
- ホーキング博士自身も2004年に「情報は消えない」派に転向した
- でも「では情報はどこに?」は、まだ完全には解決していない
・Hawking, S.W. (1974). Black hole explosions? Nature, 248, 30–31.
・Hawking, S.W. (1976). Breakdown of predictability in gravitational collapse. Physical Review D, 14, 2460.
・Hawking, S.W. (2005). Information loss in black holes. Physical Review D, 72, 084013.
・Event Horizon Telescope Collaboration (2019). First M87 Event Horizon Telescope Results. The Astrophysical Journal Letters, 875, L1.
・Almheiri et al. (2020). The Page curve of Hawking radiation from semiclassical geometry. JHEP, 149.
・Sakurai, J.J. (1985). Modern Quantum Mechanics. Benjamin/Cummings.

