六甲山の自然と人が育む学び

ラーンネット・グローバルスクール新代表・駒崎智紀さんにお話を伺いました

神戸・六甲山の豊かな自然の中で、子ども一人ひとりの好奇心や探究心を大切にした学びを実践している「ラーンネット・グローバルスクール」。

一般的な学校とは異なる教育方針を持つ、オルタナティブスクールの一つです。

今回、2026年4月からラーンネット・グローバルスクール小学部の代表に就任された駒崎智紀さんに、代表就任までの経緯、受け継いでいきたい教育、これからのラーンネットが目指す姿についてお話を伺いました。

六甲山という場所をどのように学びへと生かしていくのか。

探究とは、本来どのようなものなのか。

そして、AIが身近になる時代に、子どもたちにはどのような経験が必要なのか。

駒崎さんのお話から見えてきたのは、何か新しい教育を一からつくるのではなく、これまでラーンネットが大切にしてきたものを見つめ直し、その本質を次の時代へつないでいこうとする姿勢でした。


1.代表就任までの経緯

駒崎さんは約12年前にラーンネットへ入り、小学部で5年間勤務。その後、中等部にあたる「ラーンネット・エッジ」を立ち上げました。

近年は法人全体の経営に関わりながら、2026年4月からは小学部の代表へ就任されました。

小学部で子どもたちと直接関わった経験と、中等部の立ち上げや運営に携わった経験。その両方を生かしながら、現在はラーンネットの次の歩みを考えておられます。

【写真:スクールの様子】


2.先代の教育をそのまま守るのではなく、本質を取り戻す

約30年前には先進的だった「探究」が、現在では広く使われる言葉になりました。

長い歴史の中で、人数の増加や現場の変化の中で、学校の軸が見えにくくなった時期もあったといいます。

駒崎さんは、新しいものを付け加えるだけではなく、ラーンネット本来の核を整理し直そうとしています。

伝統を守ることは、過去と同じことを繰り返すことではありません。

これまで大切にされてきた教育の本質を見つめ直し、今の子どもたちに合う形で受け継いでいくこと。それが、駒崎さんの考える継承なのだと感じました。


3.六甲山で学ぶ意味を明確にする

六甲山という特別な場所へ毎日通う以上、山でなければできない学びを大切にしたいと語られました。

自然の中で実際に試し、考え、行動する学びを充実させることに取り組んでいます。

六甲山には、野生の植物や動物、昆虫など、教科書や画面の中だけでは分からない多くの出会いがあります。

触れてみる。

観察してみる。

疑問を持つ。

実際に試してみる。

こうした体験の積み重ねが、子ども自身の問いや探究へとつながっていきます。

学校が山の中にあることを単なる立地上の特徴とするのではなく、六甲山そのものを学びの環境として生かしていくことが、これからのラーンネットの大きな柱となります。

【写真:小学部の自然体験や屋外活動】

 

 


4.異年齢で「一つの家族」のように育つ学校

異年齢の子どもたちが一つの家族のように過ごすことも、ラーンネットの大切な特徴です。

さらに、車でさまざまな場所へ出かけられる機動力を生かし、学校の外にも学びを広げようとしています。

一般的な学校では、同じ年齢の子どもたちが学年ごとに分かれて生活することが多くあります。

一方、ラーンネットでは、年齢の異なる子ども同士が日常的に関わります。

年上の子どもが年下の子どもを気にかけたり、年下の子どもが年上の姿から学んだりする中で、教科の学習だけでは得られない人との関わり方や役割意識が育っていきます。

学校の中だけで学びを完結させず、必要に応じて外へ出かけ、地域や社会と出会うことも、ラーンネットらしい学びの一つです。


5.駒崎さん個人の理想を押しつける改革ではない

印象的だったのは、「自分がこうしたいということではない」という言葉です。

すでに存在する場所、子ども、スタッフ、保護者の願いを見つめ、それぞれが持つエネルギーが自然に向かう方向に整えていくことが、代表としての役割だと考えておられます。

代表が自分の理想だけを掲げ、周囲をその方向へ動かしていくのではありません。

六甲山という場所が持つ力。

そこへ通う子どもたちの好奇心やエネルギー。

長年子どもたちに関わってきたスタッフの経験。

そして、保護者がラーンネットに期待していること。

すでにあるものを丁寧に見つめ、それぞれの力が十分に発揮される方向へ整えていく。

駒崎さんのお話からは、学校を強く引っ張るリーダーというよりも、学校が本来持っている力を引き出すリーダーとしての姿勢が伝わってきました。


6.探究とは、調べてまとめることだけではない

小学生の探究では、「作ってみる」「やってみる」「出かけてみる」ことが重要だと語られました。

インターネットやAIで既存の情報を調べてまとめるだけでは、誰かが探究した結果を受け取ることになり、自分自身の探究にはなりにくいという考えです。

現在、「探究」という言葉は、さまざまな学校や教育の場で使われています。

しかし、検索して情報を集め、それを整理して発表するだけで、探究と呼べるのでしょうか。

駒崎さんが大切にしているのは、子ども自身が実際に動くことです。

作ってみたら、思うようにいかなかった。

やってみたら、新しい疑問が生まれた。

現地へ出かけたら、想像とは違うものが見えた。

こうした経験の中で、子どもは自分の問いを持ち、考えを深めていきます。

答えを知ることだけではなく、自分で確かめ、失敗し、もう一度考えること。その過程そのものが、ラーンネットの考える探究なのです。


7.生成AIは環境に応じて活用を考える

現時点では、小学部で生成AIを積極的に活用する必要性は高くないと考えておられます。

少人数の環境では、子どもの疑問に大人が直接応答できるため、まずは人との対話や実体験を大切にしたいとのことでした。

一方で、教員不足の学校や教育機会が限られた環境では、AIが子どもの壁打ち相手となる可能性もあり、環境に応じた活用には理解を示されました。

生成AIを使うか、使わないかという二者択一ではなく、子どもの年齢、学びの目的、周囲の大人の人数、教育環境などを踏まえて考えることが大切です。

身近にいる大人が、子どもの疑問を受け止め、

「あなたはどう思う?」

「一緒に確かめてみよう」

と対話できるのであれば、まずはその人との関わりや実体験を大切にする。

その一方で、十分な教育機会や対話の相手を得られない子どもにとっては、AIが考えを深めたり、世界を広げたりする一つの手段になるかもしれません。

AIありきで教育を考えるのではなく、子どもにとって何が必要なのかを起点に活用方法を考える姿勢が重要だと感じました。


8.オルタナティブスクールを「特別な学校」とは考えていない

ラーンネットの教育は、突飛で特殊なものではなく、子どもの育ちを普通に考えれば成り立つ教育だと捉えておられます。

同じような教育が、さまざまな地域や学校で行われることを望んでいます。

オルタナティブスクールという言葉から、一般の学校とは大きく異なる、特別な教育を行う場所という印象を持つ方もいるかもしれません。

しかし、ラーンネットにも、日本語や算数などの学習があります。

その上で、子どもが自分で考えること、異年齢で関わること、自然や社会の中で実際に体験することを大切にしています。

子どもの育ちを中心に据えて考えれば、決して特別なことをしているのではない。

駒崎さんの言葉からは、オルタナティブ教育を一部の人だけの特別な教育にするのではなく、さまざまな場所へ広げていきたいという思いが伝わってきました。


9.学校の最大の魅力は「場所」と「人」

駒崎さんが挙げたラーンネットの魅力は、六甲山という「立地」と、子どもに関わる「大人」です。

学校がどこにあるかによってカリキュラムは自ずと決まり、そこにいる大人もまた、子どもが育つための重要な環境になるという考えです。

自然豊かな山の中にある学校と、多くの人や施設が集まる街の中にある学校とでは、できる学びも異なります。

ラーンネットでは、六甲山にあることを生かし、自然との関わりを学びの中心の一つに置いています。

そして、もう一つの環境が「人」です。

子どもにとって、身近にいる大人がどのように考え、どのように問いかけ、失敗や挑戦をどう受け止めるかは、日々の学びに大きな影響を与えます。

立派な施設や新しい教材だけでは、学校の魅力は生まれません。

どのような場所で、どのような大人と過ごすのか。

「場所」と「人」の両方を整えることが、ラーンネットの教育の土台となっています。

【写真:スタッフと子どもたちの活動風景】


10.今後の課題

既存の学校教育に疑問を感じたり、不登校となる子どもの数が増える中で、ラーンネットのような教育も、一つの選択肢として社会にもっと広く認知されていく必要があると考えておられます。

ラーンネットが30年以上培ってきた教育を、より多くの子どもたちへ届けていくことが、今後の大きな課題とのことでした。

子どもに合う学びの形は、一つではありません。

現在の学校で安心して学べる子どももいれば、別の環境に移ることで、自分らしさや学ぶ意欲を取り戻す子どももいます。

大切なのは、一つの教育だけを正解とするのではなく、子どもや家庭が複数の選択肢を知り、その中から合う環境を選べることです。

ラーンネットが30年以上にわたって培ってきた実践が社会に広く知られることは、ラーンネットに通う子どもたちだけでなく、日本の教育全体にとっても意味のあることではないでしょうか。


すでにある力を見つめ、次の時代へつなぐ

今回、駒崎さんのお話を伺い、強く印象に残ったのは、「新しいものをつくること」だけが改革ではないということでした。

六甲山という場所。

そこへ通う子どもたち。

子どもの成長を支える大人たち。

長い年月をかけて受け継がれてきた教育の文化。

すでにそこにあるものの価値を見つめ直し、それぞれが持つ力を生かすことも、大切な改革です。

自然の中で実際にやってみること。

年齢を超えて人と関わること。

答えをすぐに求めるのではなく、問いを持ち続けること。

そして、子どもが自分の内側にある好奇心や意欲に気づくこと。

ラーンネット・グローバルスクールがこれからどのような歩みを進めていくのか、今後も注目していきたいと思います。

駒崎さん、このたびは貴重なお話をありがとうございました。


ラーンネット・グローバルスクールについて

ラーンネット・グローバルスクールは、神戸・六甲山の自然豊かな環境を生かしながら、子ども一人ひとりの好奇心、探究心、自ら学ぶ力を大切にしているオルタナティブスクールです。

小学部では、自然体験や異年齢での関わり、教科を超えた学びなどを通して、子どもたちが自分で考え、行動することを大切にしています。

この素晴らしい環境をほかの学校に通うお子さんたちに「アフタースクール」として受け入れてはもらえないか?という提案を鈴木のほうからさせていただきインタビューを終えました。
何か、進捗があればご連絡をいただけるとのことです。楽しみにお待ちしましょう。

公式ホームページ
https://l-net.com/

ラーンネット・エッジ
https://note.com/learnnet_edge